ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【迷路館の殺人/時計館の殺人】「その館」ならではのストーリーとトリック

シリーズ第3弾。地下に建てられ、迷路によって部屋同士がつながれた「迷路館」。
ある日、島田に届いた一冊の本「迷路館の殺人」。それは作家・鹿谷門美が自身の体験をもとに書き起こした小説だった。迷路館で起こった事件を、作中の小説で追っていく話。


シリーズ第5弾。鳴らない時計塔がそびえ建つ「時計館」。
少女の幽霊が出るという館に、泊まり込み取材をすることになった雑誌編集者の江南。幽霊目撃譚のきっかけとなった10年前の事件と、新たに起こった殺人事件とが交錯する話。


館シリーズを読むのもこれで7作目。他作の感想はこちら(人形館・奇面館・水車館暗黒館

『迷路館』は「小説の中で綴られる小説」というメタ的要素がおもしろかったです。
そして提示される数々の謎はシンプルなのに複雑、というのがすごい。シンプルなのに複雑ってどういうこと……?と我ながら思いますが、そうとしか表現できないのがフシギです。
そしていくつかある謎の中で、たぶん読者が最初にして最大の関心を向けるだろうとある謎。もしそれが解けたとしてもさらにもう一つ謎が施してあって、よくできているな~と感じました。「小説の中で語られる小説の話」と同じように、全体的にマトリョーシカというか入れ子構造になっている様子。

そして『時計館』もおもしろかったです。ただ個人的な事情により狐につままれたような気持ちに。15~20年くらい前に一度読んだことがあるのですが、そのときの記憶と微妙に内容が違っていて一人混乱しています。

内容はAグループ(探偵所属)とBグループ(ワトソン所属)の視点が交互に描かれます。そしてBグループで次々と起こる殺人事件。しかしAグループはそのことにまったく気づきません。果たしてAグループは気づくのか、Bグループの人たちの命運は……!?と、ここまでは記憶通りでした。
さらに自分の記憶だと「Aグループが館の中に入りBグループを探す」展開があったはず。同時刻に同じ館の中にいるはずなのになぜか両グループは会えなくて「なぜ会えないのか、何が起こっているのか」が最大の謎でした。トリックも覚えています。
しかし今回読んだ『時計館』ではBグループをAグループが探しに行くフェーズなんてありませんでしたし、もちろんトリックも違います。

私の記憶がたしかならばァー!と『料理の鉄人』なら言いたいところ。ですが、記憶違いを起こしているからどうしたものかと。
きっと何か別の作品と混同しているのでしょう。ただいったい何と間違えているのか。思い当たる作品がヒットしなくて首を捻ってます。
記憶とまったく違うならこのポンコツ記憶力め~で済ませられますけど、ところどころ合っているものだからなおさら不可解。微妙なかみ合わなさがキモチワルイ。


話は変わりますが、どちらも外部と連絡不可能なクローズドサークルもの。携帯電話があればなぁと思いました。なにせ1980年後半の話なので、窓のない屋敷の外から鍵掛けられたり嵐がきたりすると、途端に孤立無援となります。
今だったら携帯電話ですぐ連絡が取れるでしょう。電波が届くかぎりは。そう考えると、携帯が普及した今「外部と連絡が取れないシチュエーション」を作るのはとても難しいですね。
現代のクローズドサークルものはなかなか得難いものなのだと、逆説的に痛感しました。