ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【黒い仏】これは推理小説なのだろうか?硬派なタイトルからは予想もつかないユニークな物語

探偵・石動シリーズ第2弾。
唐から帰国しようとした僧・円載がもたらしたとされる秘宝。その宝探しと、アパートの一室で起こった殺人事件。絡み合う両者を探偵・石動戯作が解き明かすお話。


10年ほど前に同作者さんの『ハサミ男』を読み、あまりのおもしろさに度肝を抜かれてから他の作品も読みたいな~と思ってました。自分の「寝かせておきたい病」が作用したのと「思い立ったが吉日」を待っていたら今日に至りました。
ちなみに『ハサミ男』は映画も観てます。映画は映画でおもしろかったですが、やはり小説の方が「本領発揮!」という印象。


今作『黒い仏』には、不可解な造りの館や密室殺人は出てきません。天台宗の僧侶・円載の失われた秘宝×殺人事件という、分類としては歴史ミステリになるのでしょうか。
探偵はひたすら宝探しをしていて殺人事件にはノータッチ。そこからどのように殺人事件に関わっていくのかが、まず見どころの一つ。
そして1000年以上隠されてきた宝の隠し場所。その在処をどう解くのか。

どう解くんだろう、と見守っていたらまさかのラストで「な、なるほどぉ?!!??」でした。たぶん読んだ100人中100人がそう感じると思います。半分くらいが笑いをかみ殺して、さらに半分は天井を仰ぐのではないでしょうか。本を投げ出す人もいるかもしれません。

自分は笑いをかみ殺す方で、困惑しながらも最後まで楽しむことはできました。ただ「推理小説ではないな!??」とは思いました。うん推理小説ではない(断言)。
推理小説では(以下略)……とは思うものの、ギリギリ成り立っていると言えなくもない?作者さん、よくこの話を書いたものです。そして出版社もよくOKしたな!?
なかなかの禁じ手ではありますが、いざ書くとなると按配がすごく難しい気がします。「なんでもあり」になってしまうし、リアリティも薄まるからバランスを取るのが大変そう。しかも単発ではなくシリーズものですし。
むしろシリーズものだからできたことだし、おもしろかったのだとも思います。

黒い仏』は石動シリーズの2作目にあたります。あまり順番を気にしない(むしろ続き物でないならランダムに読みたい)ので2冊目から読みましたが、特に問題は感じませんでした。
助手・アントニオが謎めきすぎていて「???」でしたけど、1巻を読んだ人にとってもたぶん衝撃の「!!!??」という展開だったのでは。

次はシリーズ1作目『美濃牛』を読みます。たぶん「ミノタウロス」のことなのでしょうけどなぜ漢字を当てているのか。気になります。