ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【ヨルムンガンド】戦争と平和

両親を戦争で失ったことで、武器を憎む元少年兵のヨナ。ある出来事をきっかけに、武器商人ココとその私兵8人とともに世界各地を旅することになる。武器を売ったり殺し屋に狙われたり陰謀に巻き込まれたりする中で、ココの「ある計画」が明らかになっていく話。


完結したおよそ10年くらい前、全巻持ってました。が、途中で手放してしまい。
もっかい読みたいな~と思っていたところ購入時のポイントアップキャンペーンをやっていたので買ってしまいました。こういうとき、自由にできるお金持っててよかった~と思います。ビバ社会人。

武器商人と私兵たちの話なので、武器や軍隊、諜報機関などがガンガン出てきます。ただその辺の知識はさっぱりなため、整合性がとれてるのかとか、リアリティがあるのかなどはわかりません。
しかし今読んでもやはりおもしろいです。

このお話で好きなところは、
・絵柄
・キャラクター性
・キャラ同士のコミカルな掛け合い
・話の展開が早い
・悲惨なんだけど描き方がサラッとしている
・あちこちで話がリンクまたはオーバーラップしている
・味わい深い台詞
です。


話の構成としては、数話で終わる短い話がいくつも集まって、武器商人ココの「計画」が浮かび上がる流れとなっています。
その「短い話」もだいたいは、武器を売る過程である組織と対立→ドンパチ か、殺し屋に狙われる→ドンパチ のどちらか。
ただ戦いを通して、ココの私兵たちの生い立ちやスキルや人となりが開示されたり、戦争哲学が語られたりと味わい深い。まぁ悲惨なことばかりですが。なにせ「武器と戦争」がテーマなので、底なしに明るくハッピーなものにはどうしたってなりません。

悲惨なんですけど、キャラ同士の掛け合いはとってもコミカル。7割冗談なのでそこまで暗い気持ちにはならずに済んでます。「優秀な若者の足を引っ張るの、胸が痛むなぁ」「え?持病?」「ちげーよ」とかめちゃくちゃ笑いました。
あとは絵柄や描き方がサラッとしているからか、砂漠地帯を歩いているような荒涼感がずっとある。大地は砂漠で戦争だらけなのに見上げた空は底抜けに青く明るい、みたいな。

明るいしテンポも早いしでサクサク読んでいると、合間合間に目をひく台詞が入ります。

「殺って殺られて殺り返して。でも俺が殺られた時には殺り返さなくていい」
「自分の『分』を知った相手が好きだから」
「その氷、私が溶かそう」
「磨いてあげるような付き合いじゃないんだ。でもお前が錆びると僕が死ぬ」

とか、とか。
慈悲も何もあったもんじゃない中でこんな台詞が挿入されると、感情がブワー押し寄せてグワーと捻じれそうになります。
「人は必ず死ぬのに、戦わないの?なんのために生まれてきたの?」とかも、言ってる人がアレなのでヤジ飛ばしたくなりますけど、台詞自体はアツい。初めて読んだときは勇気をもらった気がしました。


あと表紙が毎回「ココ+私兵の誰か」なところも好きです。ポーズにそこまで大きな違いはないながら、キャラの性格が出てる気がするしその私兵とココの関係性も見える感じがたまりません。7巻の表紙が好きすぎてツライです。
そんで10巻がココ、11巻がヨナで締めくくられるところもいい。ふつう逆な気がしますが、ココで締めくくられるのは何か違う気がして。
すべてを企てたのはココですが、やはりヨナは子供かつ未来への希望の象徴、だから最終巻を飾るのにふさわしいのでしょう。

改めて読み返してみると、この話とこの話はオーバーラップしてるんだな~と当時気づかなかったことが見えてきました。年を取って、自分の感じ方や物の見方が変わってきたのかもしれません。
一度読んだものをもう一回だなんて……とためらいの方が強かったですけど、そう捨てたもんじゃないと思いなおしました。