ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【館シリーズ】ギリ解ける難易度の推理小説

シリーズ第4弾。顔がなく、どこか一ヵ所を欠落させた人形が佇む「人形館」。
療養を終えた「私」は、父が残した館に母と移住した。しかし密室下でのいたずらや郵便受けに入ったガラス片、脅迫状など身の危険を感じる中、ついに殺人事件が起こる。探偵役・島田潔が旧友を遠方から救おうとする話。

シリーズ第9弾。富豪家・影山逸史が所有する山中の「奇面館」。
<ある条件>のもと主に招かれた6人の客人たちは翌朝、主と思しき変わり果てた遺体を発見する。しかし季節外れの猛吹雪により下山もできない。客人の一人である小説家・鹿谷門実を筆頭に、屋敷の中で何があったかを探る話。

 

シリーズ第2弾。異端の建築家、中村青司が建てた「水車館」。
人目を忍ぶように暮らす車椅子の主人とその幼妻。一年に一度行われる会合の最中、殺人事件が起こる。密室下から抜け出し、いまだ逃走を続ける犯人。そしてその一年後、またもや会合の中で人が殺されてしまう。一年前と現在の事件の謎を探偵役・島田潔が解き明かす話。


「ごってごてのミステリが読みたい」と思い、連想したのが推理作家・綾辻行人氏の「館」シリーズ。現在は第9巻『奇面館の殺人』まで発売されています。
ごってごてのミステリとは、自分にとっては「密室」「連続殺人」「いわく付きのもの・場所」「複雑怪奇なトリック」などです。人間ドラマよりもシチュエーションやトリック重視。
「館」シリーズも人間ドラマ≦トリックで、何らかの仕掛け(隠し部屋)がある奇妙な館とそこで起こる不可解な殺人事件が共通しています。

今回は上に挙げた順に、人形館(4巻)・奇面館(9)・水車館(2)と読み進めました。
ただシリーズ第1弾『十角館の殺人』は10~20年くらい前に読んでいます。あとたぶん第5弾『時計館』も読んでいる、はず。どちらもかなりうろ覚えで、メイントリックがなんとなくわかるくらい。『時計館』にいたっては本当に読んだのかすら定かではありません。別の作品を混同してしまっているかも。
『十角館』は複雑怪奇なトリックというか、そうまでして殺すの!?とびっくり仰天した覚えがあります。登場人物たちの人となりや背景よりも、とにかく「特殊な館」と「あっと驚くトリック」がメインだった印象。

ただ今回『人形館』『奇面館』『水車館』を読んで、当時いだいた印象が少し変わりました。トリックメインなのは変わりませんが、個性的な登場人物たちをうまく配置している。あと「リアリティが保てるギリギリ」を狙っているように感じます。
ありえないし絶対無理じゃろ、ではなく、あるかもしれないしできなくもない……?と読者に思わせるような路線。荒唐無稽すぎてもいけないし、かといってあっと驚くような飛躍もほしいしで、この「ギリギリ」をゆくのがとても難しい気がする。

しかも巻ごとに微妙に趣きが異なります。奇抜な館とそこに集まる必然性、そしてトリックが違うのはもちろんですが、話の見せ方・展開の仕方が工夫されている。
『奇面館』はむごたらしい殺人と館や仮面の探索、『水車館』は過去と現在を行ったり来たり。そして『人形館』はちょっとうまく表現できませんが、とにかく「特殊」。その一言に尽きます。かなりの巻数が出ているのに、それぞれで趣向を凝らしているのすごい。
そしておそらく、シリーズものだからこそできるトリックもあるでしょう。9巻『奇面館』→2巻『水車館』と読んで「おや?」な点を見つけてしまいました。たぶんこれもどこかの巻でタネとして扱われているんだろうな。

できればすべて読みたいですが、少なくともあと『暗黒館の殺人』は読みたいです。文庫本で4巻まで出ているの、なんだか気合の入り方が違うように感じるので。『迷路巻~』も気になります。