ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【聖地X】その作品は神にも悪魔にもなれる

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半ばニート生活を送る兄と、離婚危機を迎えている妹。「妹夫のドッペルゲンガー」に悩まされる2人が、韓国を舞台に奔走する話。


公開前に何かのきっかけで予告を観て、うわぁ~メチャメチャおもしろそ~と気になっていました。しかし公開館の少なさから断念。
それがいつの間にかPrime対象作品になっているのだからいい時代になりました。采配に感謝。


観た感想。ホラーと銘打ってますがほとんど怖くありません。むしろ予告編の方が怖い。どういうことなの……。
ホラーというよりもどちらかというと怪談、またはミステリー寄り。そして「怖さ」よりも、カメラワークや小物類から漂う「不穏さ」の方が強い気がします。終始どことなく不気味で怪訝だし、あと服の中に入った髪の毛みたいにチクチク刺さって不快、という感じも漂っていました。

また不思議と余韻の残るお話でした。
手放しでおもしろい!とか、また観たい!とまではならないものの、終わったあとにあれこれ反芻したり考えたりしてしまいます。
ストーリーはなかなか大味で、リアルさは薄く「そうはならんやろ」という展開が多め。ただ見せ方が繊細で細やかな印象を受けました。
たとえばカメラワークや小物の使い方。鏡、コップと中の水、指輪、登場人物たちの衣装など。

大味なところと繊細なところの配分が絶妙で「このシーンいる?」と思える冗長な場面も不思議と間延びしすぎない。緩急のつけ方がうまいのでしょうか。
むしろ冗長と思える場面すら、のちの展開の伏線……というかオーバーラップしていることに気づきます。最初観ているといは何とも思いませんでしたが、終わったあとストーリーを反芻していて「ああなるほどな~」と手を打つことも。

メタ的な構造といい伏線(?)の張り方も見事でしたし、あとフツーにストーリーがよかった。ホラー映画と考えると怖さ薄めで物足りないものの、ヒューマンドラマや人物成長譚と捉えるとグッとくるところがあります。
終盤にある人が奮起する場面とか、終わり方もいい。

展開が重すぎず軽すぎず、疾走感もありつつの考えさせられるテーマもありました。今考えると、視聴者からしたこの作品そのものが「聖地X」なのかもしれません。評価はわかれるでしょうが、少なくとも自分は観てよかったと思いました。予告から想像したストーリーとはだいぶ違いましたが(笑)