【すずめの戸締まり】いつまで共にいられるのだろう
九州に住む高校生の主人公はある日、廃墟を探している青年と出会う。
扉からあふれ出す災いを鎮める青年と、椅子に変えられた青年を元に戻すため元凶の猫を追う主人公。世界の危機と個人の課題、葛藤がシンクロする話。
観てきました。
風景きれいだったーとかこのキャラがーとか、ここに感動したとか楽曲がイイ!などはかるく1万回言われているはず。なので今作のみならず、これまで新海監督の作品にふれて感じたことをまとめます。
これまで観たのは『雲の向こう、約束の場所』と『天気の子』のみ。今作を併せてもまだ3作品……サンプル数少なすぎ問題はいなめませんが、それでもあえて語るとすれば。
どこか神話的な物語、という点が共通でしょうか。また、世界スケールで描かれるわりに個に収束したまま話が終わるところがおもしろいです。
たとえば、同じく活躍されている細田守監督も世界をまたにかけた話を描くことがあります(例:『サマーウォーズ』)。ただ細田さんの場合は「解決までを大勢が目撃」するし、場合によっては目撃した人々も事件後に変わることがありそう。主人公やその周りの人だけではなく広範囲バフ(?)なところに外向きな感じを受けます。
一方で新海さんの場合だと、解決を見届けるのは主人公とその相棒役か広くても内輪という印象。「この旅路を見届けるのは自分か、大切な人たちだけでいい」みたいな内向きさに親近感がわく。
「内輪で終わる世界規模の危機」の他にも、神、贄、全より一、家出、死と再生、結婚といったテーマが底の方で流れているなと。気づいていないだけで他にもまだあるかもしれません。
少しずつ表現が異なるとはいえ、なぜ同じようなテーマがくり返されているのかは謎。まだ3作しか観ていませんし監督の趣味あるいは癖なのかもですが、なんとなく胎内くぐりを連想します。何度も同じ(ような)道を辿ることで何が生まれるのか、気になります。
上に挙げた共通テーマについて。
全より一、つまり世界中の人々よりも「あなた(君)」を選ぶ、というのは最初観たときすごく驚きました。いやこれまでも別のいろんな作品で描かれてきたでしょうが、ここまではっきり言い切るんだ……と。
個よりも集団を重んじてきたこれまでの歴史を鑑みると、なんだかすごく若いし現代的な考えだな~と思ったことを覚えています。
最後に、今作について2つだけ。
休日に観に行ったからか、小学校中高年くらいのお子さんが目につきました。意外な感じがしつつ、しかし正しくメインターゲット層だったみたいで作中の表現、演出、台詞などわかりやすくなってきた気がしました。あくまでも『雲の向こう~』と『天気の子』との比較ですが。
ただ、お子さんたちに伝わったかはわかりません。隣にいた小3くらいの子、上映中ほぼずっとポップコーンに夢中だったが……?迫力あるシーンでは手を止めていたからよかったのかな。
そしてもう一つは、観終わってからずっと猫のことばかり考えてしまう、ということ。じゃ●りこみたいに止まらない……。
猫の気持ちを想像すると「あ゛ー!!!」と叫び胸を掻きむしりたくなるので、もう少し考えがまとまったら猫語りするかもしれません。
同監督の大ヒット作品『君の名は。』はこれから観る予定です。