ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【パーフェクト・トラップ】出力控えめな『ソウ』

パーフェクト・トラップ(字幕版)

パーフェクト・トラップ(字幕版)

  • ジョシュ・スチュワート
Amazon

「現場の人間を一人だけ誘拐し、あとは皆殺し」という手口の連続殺人犯。誘拐先からかろうじて逃げおおせたアーキンと、逆に捕まってしまったエレナ、そしてエレナの捜索隊たちがトラップだらけの廃ホテルから脱出する話。


『ソウ』シリーズの脚本家が手がけた、という謳い文句に惹かれて観ました。
タイトルにもある通り、おもしろかったけれど『ソウ』と比べると物足りない、そんな感想を綴ってます。やや辛口めだと思うので以下折りたたみへ。



感想前の前置き。まず『ソウ』シリーズは2作目までしか観ていない上、1作目が至高と思っています。
また今作品、実は前作があるらしく。タイトルは『ワナオトコ』。今作はその続編の第2弾にあたります。ただ残念ながら1作目はAmazon Prime未配信。2作目のみ配信されているの、シンプルになんで?と思いますけどきっと何か理由があるのでしょう。

そんなこんなで、いろいろ中途半端ではありますが以下感想。まず『ソウ』の魅力を述べたあと、今作の物足りなかった点やおもしろかったところを挙げていきます。


●『ソウ』の魅力
先述したとおり2作目までしか観ていませんし、1作目・至上主義者です。ただたぶん全作にわたって次のような魅力があると想像します。
 ①どんでん返し要素
 ②世界観(雰囲気、厚みある登場人物たち)
 ③複雑に張り巡らされたストーリー
 ④スプラッタ要素

①②は自分が感じている1作目の良い点です。舞台設定とテンポよい話運び、そしてなにより「ある登場人物の命運はいつ決まったのか」がタネ明かしされた瞬間のそんな伏線だったのかー!!という興奮は今でもよく覚えています。

あとたぶん③や④も観る人によっては魅力的にうつると思います。④の魅力はちょっとよくわかりませんが。2作目の針山でもう駄目だったし、3なんて舞台が食肉加工工場とか正気か?としか。でも滲み出る残虐性に心惹かれる人もきっといることでしょう。

●今作との比較
今作『パーフェクト・トラップ』は、全体的に「あっさり薄味めの『ソウ』」といった印象です。

まず、殺人犯が何を目的としているのか、なぜ凶行に及ぶのかは一切語られません。ひょっとしたら1作目で語っているのかもしれませんが、今作ではまったくと言っていいほど触れられず。
そして登場人物たちの過去や事情も同じように、含みがありそうでいて多くは語られずじまい。捕らわれたエレナと捜索隊のルチェロとか、関係がわかるようでわかりませんでした。おそらくもう一人の主人公・アーキンや他捜索隊の人々も深掘りしたらおもしろそうだったから残念です。

そんな感じで世界観や登場人物たちの描写はやや薄め。建物内も『ソウ』のような観ているだけで緊張するような重厚さは感じられません。
ただありがたいことにスプラッタ要素も薄めです。血飛沫・欠損表現はあれど「いっそひと思いに殺せー!」と叫びたくなるような拷問めいたシーンは少ししかありません。たすかる。

なので新規層の開拓には一役買っているかもしれません。『ソウ』はえぐすぎて観れないけど今作なら、という人は一定数いるはず。
と思うと同時に、この先も続編が出たとして観るかと訊かれたら首をひねってしまう。観やすくはなっているものの、この先も追うかというとどうだろう……ファンになるほど惹きつけられるものは今のところ感じません。
生意気言うようですが、もう少し差別化を図った方がいい気がしました。たとえばミステリ要素を強めるとか、舞台の雰囲気を作り込むとか。いや単に自分が観てみたいだけですが。

散々言いましたけど、最後におもしろかったところについて。
序盤のピタゴラスイッチと、突然ゾンビ映画みたいになる場面がおもしろかったです。どちらも本当に突然始まるので急になんなのだよと笑えてくる。笑う場面ではぜんぜんないんですけど。
この2つのシーンが印象強すぎて、なんだかんだ観てよかったな~とは思いました。