ほねぐみ

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【ウィリーズ・ワンダーランド】言葉が通じない強み

寡黙な主人公を演ずるニコラス・ケイジが、ひょんなことから廃園した遊園地で一夜を明かすこととなり、そこに蔓延る”殺戮人形”たちとバトルをしたりしなかったりするお話。

分類するならホラー? サスペンス? かもしれませんが、主人公が強すぎてちっとも怖くありません。あとほんのりギャグテイスト。
かといって馬鹿馬鹿しすぎるわけでもなく、ヒロインの生い立ちや”殺戮人形”たち誕生のいきさつはわりとシリアスです。ユーモアとシリアスの配分というか、バランスのとり方がおもしろい作品だと感じました。

あと主人公まったく喋らないのに、それでも話が成り立つのもすごい。「寡黙な男」を通り越して主人公ほんっっっとうに話しません。でも人となりが伝わるという。
ヒロインの仲間たちのキャラ立てもよかったです。動きと少しの会話だけで「どういう人か」「仲間内でどんな立ち位置か」が掴めてしまうの、うまいなーすごいなーと思いながら観てました。

ぜんぜん喋らない主人公ですが、バトル中は獣性まるだしなのがほんのり笑えます。
きっとギャップをもたせて笑いを誘ったり、人形たちとタメ張る異質性を表したりするための味付けだろうと思いつつ。遊園地を中心とするあの世界では「言葉」がけっこう重要なのかもとも思いました。

というのも、「どうして町の人たちはたかが人形を怖がるのか、逆らわないのか」がすごく不思議で。
中身がどんなに凶悪だろうと外見はただの機械人形。たしかにデカくて怖いですけど、外から建物ごと火をつけるなり、町の人みんなで武器を持って立ち向かうなりすればいいのになと思ってました。
それをしなかった(できなかった)のは、町の人もこれまでの被害者たちもみんな、人形たちに洗脳されていたからではないか。人形たちが殺したいのは、人間=恐怖できる者=知性があり言葉を操る者で、あの歌が引き金だったのかなーとか。でも主人公は(言われてることは理解できても)話さないし言葉を使わないから洗脳歌が通じず、それで抵抗できたのかなとか。
観終わってからそんなことを考えてました。観ている間はもちろん、主人公への「ヤッチマイナー!」ばかりでしたが。

多少グロはありますがホラー映画にしては怖くありませんし、主人公が強すぎて軽快。コミカルだけれど馬鹿馬鹿しすぎず、シリアスさも笑いも緊張感もすべてが程よい感じ。肩ひじ張らずに観ることができました。
ラストは不思議なことに、希望と一抹の哀愁が入り混じっていた気がします。