ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【春の呪い(※ネタバレあり)】相手を思うからこその呪い

ずーっと気になっていた漫画。ようやく読むことができました。
一言でまとめると最高
主要3人それぞれの葛藤や、生者→死者への感情の収めどころ、あと「苦くもあり爽やかなラスト」が印象的でした。
春(秋)・夏・冬の3人が「お互いをどう思っているのか」という描き方がとにかくにいい。くっつく夏と冬の間には必ず春・秋が入るという。春を介さずには一緒にいられない、まさに「春の呪い」がひしひし感じられるのがたまらない……。

あらすじは「一人の男性を姉妹で取り合う三角関係もの」でしょうか。ただ3人が3人ともお互いにすごく複雑な気持ちを持っていて、恋愛模様の描き方が特殊だなと感じました。こういう「恋」「愛」もありうるのかと。ハッとさせられた次第です。

夏美さんはほぼずっと春の面影しか追っていなくて、冬吾さんが気になるのだって春と付き合っていたから&春の話ができるから見初めたのではないか、という印象。春の思い出と失った痛みを共有できるのは、夏美さんにとって彼だけだと思います。
とはいえまったく冬吾さんのことを想っていないわけでも(たぶん)なく、春の幻影を追いつつも、いつかは生者・冬吾さんに軍配が上がりそう。ただ夏美さん、そのことに気づいたら絶望しそうですが。

冬吾さんは春が死んでなければ自分の生き方に疑問を持つこともなかったでしょう。ずっと気になっていた夏美さんと思いを通じ合えたのは春のおかげとして、ただ彼が開眼したのは果たしてよかったのか。何の疑問もなく春と結婚して子供を産み育てて、そうしたら順風満帆だったろうに……。
自分の在り方・生き方に疑問を持つのが手放しでよいこととは思いません。「疑問こそが人生の醍醐味であり生きる意味」が持論ですが、疑問を持たずに生きていけるのであればそれに越したことはない。
これは夏美さんにも言えることではないかと。
ずーっと後になってから「あのときこの手を取ってよかった」と思えるといいです。お互いに。

作中でも示唆されていたように「この先も続いていく」ことがすごく難しい2人だろうと思います。まず夏美さんは、あるとき春のことを思い出しても平気になっている自分に気づいて愕然としそうですし。そして取り乱すのではないか。
あと入籍・出産・子育てのイメージがまったくわきません。できるのか……!? と思ってしまう。なので事実婚か、籍を入れたとしても子なし夫婦世帯になるか。珍しいことではありませんが、それぞれ職場で「結婚しないんですか?」とか「子どもは?」と訊かれてモニャることもある気がします。

一緒にいるために「どういう在り方が理想か」「できそうか」を擦り合わせていく2人も見たかったなぁと思いました。だからいつか続きの話よ出てくれないか……と願ってやみません。