ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【ブレイン・ゲーム】死は救いか

suminotosyo.hatenablog.com


前回『拷問男』で削られたSAN値を回復するため視聴。すでに4、5回は観てますが、何回観てもいい作品です。
なんで『拷問男』のあとに『ブレイン・ゲーム』!? と訊かれたので、理由を考えてみました。たぶん「究極の愛の行為はこの上なくつらい」という台詞に、両作品のつながりを(勝手に)感じたのだと思います。生者から死者への、父から子どもへの想いという通奏低音がある気がする。ただ気持ちの示し方はまったく違いますが。だから『ブレイン・ゲーム』に癒されたかったのではないでしょうか。

何回観ても思うのは、ジョン氏いろいろ秘めすぎではないかということ。
娘さんのことやジョーのことなど、あれだけいろんなことがわかっていてよく黙っていられるよな……と。貝のように固く口を閉ざしたまま生きていけるのが不思議でなりません。自分だったら絶対つらくなってどこかに吐き出したくなると思うので。

映画そのものからはやや外れますが、生物は生まれるとなぜか一回死ぬことが決まっていて、ただその「死」がなんなのかは永久にわかりません。わからないながらも、怯えたり希望を持ったりしながら死と向き合わざるを得ないのが現状です。
死と同様に「生」もすごく謎。何がどうして生きているのか。「生」が「死んでいないこと」だとしたら、死を強く意識したときこそ生死の意義やありがたみ、生き方なんかが見えてくるのかなとも思います。
そう考えると「1秒たりとも奪う権利はなかった」「最期の時は尊い」「苦痛すらいとおしい」という言葉も納得。一回しか体験できないことだから、生も死もしっかり味わい尽くそうねという意味なのかな、なんて。

余命いくばくもないとわかった時点から、本当の人生がスタートする気がする。ただ死因には事故や他殺もあるので、終了のカウントダウンがいつから始まっているのか知る術はありませんが。生まれた瞬間から始まっているとも言えるでしょう。
お医者さんがすごいと思うのはその点で、必ず死ぬことが定まっている生き物の怪我や病気をどういった心持ちで治療しているのだろうと。ものすごい精神力でしょうし、この矛盾を考え続けている人は深みある佇まいをされている気がする。特に緩和ケアに多くいらっしゃるのではと想像します。

もう何回も観ているし毎回深く感動するものの、何に感銘を受けているのかうまく言葉にできません。とにかくテーマもお話も音楽もカットもすごく好き。
ジョン氏の言葉も味わいがあって、こんな深みある人になれたらと憧れます。