ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【インド倶楽部の謎・狩人の悪夢】美しいロジック

作家アリス・国名シリーズ第9弾。
人が生まれてから死ぬまでのすべて、前世までもが記されているという「アガスティアの葉」。そのリーディングに参加したメンバが相次いで殺される事件が発生。事件と”インド倶楽部”とのつながりを解き明かす話。

作家アリスシリーズ。
同業者のホラー作家・白布施に招待され訪れた、彼の自宅の「夢守荘」。そこから少し離れた場所にある「獏ハウス」で右手首のない女性の遺体が発見された。女性が殺された経緯と右手首がない理由を探求する話。


どちらも長編です。読んだのはインド倶楽部→狩人の順ですが出版は逆。狩人の方が先に発売されています。

『インド倶楽部~』はいつも通りの火村シリーズといった印象。また犯人の導き方がおもしろかったです。なるほど、そこを糸口にするのかと。
有栖川さんの作品は物理トリックというより、物証や証言から「そのときの状況」を浮かび上がらせて「この状況でAとなるのはおかしい」とか「BとなったならCとなるはず」など順序立てて考えていくのが興味深い。
最近読んでいた綾辻行人さんの『館シリーズ』は、事件の謎というよりもストーリー全体に仕掛けられた叙述トリックが多かったです。作家さんによってスタイルがあるのおもしろい。

話はやや変わって、作中に出てきた前世療法。本当にあるのか気になって調べてみたら、ありました。

ja.wikipedia.org

挙げた本は実際に読んでいません。検索して最上に出てきたものを載せているだけです。

どうやら催眠療法からの派生だそうです。最初に行った人、よく思いついたし発見したものよ……。
前世療法。好きな人はすごく惹かれるでしょうし自分も興味がないわけではないものの、一般向けではない気がします。イロモノに見られそう。
とはいえ興味はあるので本読んでみようかな。実際に仕事で使うか、使えるか(自分の技量的に)はさておき。


翻って『狩人~』もミステリとしてよくできていたし話もおもしろかったものの、中・短編くらいがちょうどよかった気がしました。長編ではなく。
というのもテンポがあまりよろしくない感じがしたからです。本当は短編~中編くらいで作っていたのを、がんばって長編に書き増したような印象。
あるいは、今後のシリーズ全体を見据えてどうしても入れておきたいエピソードがあったのかもしれません。ラストにアリスが担った役割と、あと片桐さんのエピソードを踏まえるとそんな想像もできます。
とはいえ最初に述べた通りお話がおもしろかった。回避不可能な自然現象が事件に関わっている点で『妃は船を沈める』を思い出しました。余談ですがこのタイトルがめっちゃ好きです。

タイトルといえば『狩人の悪夢』は准教授のことドンピシャすぎて、とうとう彼の過去が明かされるのかと読む前にハラハラしました。
「狩人」は火村先生のことだし、「の悪夢」ときたら火村先生の悪夢やん……まぎらわしい!前に読んだ『鍵の掛かった男』も火村先生のことかと思ってドキドキしたことを思い出しました。
先生の過去は特に知りたいとは思わない派です。『刑事コロンボ』における「かみさん」のような、いるんだかいないんだかわからない、決して明かされないお約束の謎みたいなものかと。
でもやっぱり教えてくれるのなら知りたい……かもしれません。