ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【自分でできるスキーマ療法ワークブック】セルフケアのおすすめ本

あまりにもいい内容だったのでご紹介。

スキーマとは、なかなか意識できないほど底に根付いている自分や他者に対する価値観のこと。そのスキーマに焦点を当てて、認知行動療法では対応が難しい生きづらさの問題に取り組むのがスキーマ療法です。


臨床心理士として、産業・教育分野に携わっています。来談者におすすめできる一人でできるセルフケア本はないかな~と探すことが多く、この本もそういった経緯で手に取りました。

構成は、1冊につき10レッスンまでが掲載。Book1にレッスン1~10、Book2にレッスン11~20が載っています。
「レッスン」とあるとおりワーク形式になっていて、ただ読むだけでなくさまざまな問いに答えたり、実際にやってみたりするターンが入ります。
実は、レッスン9くらいまではスキーマ療法の準備段階というか土台固めで、実際に始まるのはレッスン10からです。
この準備段階がすごくいい。内容をかいつまむと、
 レッスン1:自分の中にある課題・問題・悩みを見える化
 レッスン2~6:セルフケア

著者の伊藤先生も仰っているように、セルフケア(レッスン6までの内容)に取り組めるようになると、それだけで生きづらさがある程度解消するとのこと。自分も実際にやってみて、レッスン2からそのことを実感しました。

レッスン2「相談できる人を探しましょう」では、ちょっとした挨拶や話ができる人、また相談できる人や機関をピックアップします。
「相談先」と言われるとそんな人おらん&いらんと思うかもしれません。自分も思いつくか心配でしたが、やってみると楽しい。また「ハナコさんの場合」「タロウさんの場合」と架空ケースの例も載っていて、考える際の参考になります。なのでやってみると「案外見つかったなぁ、自分もやるじゃない」という気持ちになりました。

レッスン6までで、悩みの見える化(レッスン1)→相談先さがし(2)→自分のストレス状況に気づく(3~4)→ストレス緩和の工夫さがし(5~6)といった段階を踏んでいきます。
また本の語り口は優しく、まるで著者が傍にいて一緒に取り組んでいるかのよう。ときどき専門用語は出てきますが、たとえ話を用いて説明してあり、イメージしやすくわかりやすいです。
語り口、説明の仕方ともに、かなり文面を練ったのではないかと思いました。ここまで優しくわかりやすく書けるのはすごいことです。


とはいえ、とっつきづらい点もあります。

(1)値段
上下合わせて6千円。自分の生活の質を上げるためとはいえ、躊躇する価格では。
ただカウンセリングが1回だいたい1万円なので、継続的に受けることを考えれば安い……といえなくもない?

(2)一人でできるか
レッスンのボリュームもですが「一人きりでワークの負荷に耐えられるか」という問題があります。
実際、ワークに取り組むうちに過去の嫌な記憶が蘇り、つらくなってしまったというAmazonのレビューがありました(ただレッスン7以降みたいですが)

(3)効果が出るまで時間がかかる
そのままです。即効性のあるものではなく、悩みを抱えた年月の分だけ、効き目が出るのも時間がかかると思います。


以上です。
めちゃめちゃいい内容だ!と思いここまで綴ってきたものの、とっつきづらい点も踏まえると「誰向けなんだろう……」という気がしてきました。

すべてのワークを一人でガッツリやるのはたぶん難しくて、長い文章を読むのが好きな人や、自分の思いや考えを言語化するのが苦にならない人に適性があると思います。
あとは認知行動療法を一度やったことがある人、またカウンセラーと一緒に進めていて自宅でもやりたい人。あるいは「とりあえずレッスン6まではやってみよう」と軽い気持ちで取り組んでみるか。

自分はまだレッスン8を終えたばかりで、スキーマ療法は本格的に始まっていません。なかなかしんどいようなので心して取り掛かります……!