ほねぐみ

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【すずめの戸締まり(※ネタバレあり)】感想か考察か。ダイジンについて

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前回の感想でも書きましたが、ダイジンについて思うところがあるので綴っていきます。あと宗像家についても少しだけ。
がっつりネタバレしております。以下折りたたみへ。


●ダイジンたちについて
主人公2人について思うことは特にない(末永く爆発ください)ですが、ダイジン'sのことを考えると胸が痛いです。「むかつく猫だ」なんて思っていた当初の自分をうしろからはたいてやりたい。

彼らがいったいどんな存在で、どういった経緯で要石となったのかはけっきょく語られませんでした。ただサダイジンのものとおぼしき「私の人生返して!」という叫びや、ダイジンの「すずめのうちの子になれなかった」という残念そうな言葉から、2匹もまた主人公たちと同じような感性を持っていることが伺えます。つまり好きな人の傍にいたいし愛されたいし、誰かの強制でなく自分で道を選び生を謳歌したいという。
ほんと2匹がどんな経緯で要石になったのかわかりませんけど、作中での台詞を思い出すと泣いちゃう……。

序盤にすずめがダイジンに言った「うちの子になる?」という発言。これは最初、環さん→すずめに向けられた言葉でした。そのセリフを嘘か真か環さんは「覚えてない」と言って、でもすずめは今でも変わらず環さん家の子。なのに、すずめ→ダイジンの言葉が叶わないってどういうこと……?
すずめは自分の言ったことを覚えているはずなのに。覚えていないと言った環さんの言葉が叶ってすずめの言葉が叶わないの、ほんとせつないしやりきれません。なんでやねんと再び要石になったダイジンを見て愕然としてました。
主人公たちが2人そろって現世に戻ってこれたの、ダイジン'sのおかげなんだからお供え物してあげてくれ。

ダイジンたちは作中で「神」と呼ばれていました。
本当に神さまなのか、あるいは要石という物体が神気を帯びて付喪神みたいにダイジンたちとなったのか。
どちらかだったらいいんですけど、草太さんが要石になった経緯を見たあとだと「ダイジン'sも元は人間だったのでは」なんて思ってしまいます。生贄が神になった、みたいな。だとしたらきっと宗像家から選出されてるんだろうな。コワイ。


●宗像家について
宗像家(というより閉じ師?)もなかなか謎。てっきりエリアごとに閉じ師が数人配属されているのかと思いきや、現役の閉じ師は宗像家しかいないっぽい。扉のメンテナンスがどれくらいの周期で必要かにもよるでしょうけど「対象エリア:日本全土」と考えると数足りないのでは。
現役閉じ師が草太さんしか出てこなかったのも怖いです。まさか現役が彼一人ってことはあるまいな……!?
後継者が草太さんしかいない状態で、師匠・羊朗さんは身体を悪くされててしかも「東京・要石の位置は羊朗さん『しか』知らない」とかだったらわらう。今回出てこなかっただけで、親戚筋の閉じ師たちがまだいることを祈ってます。

「ダイジンたちは元々人間で、宗像家の人だったのでは」と上に書きました。そう考えると、要石となった草太さんを羊朗さんが諦めた理由もわかる気がします。「昔もそうしたんだから次はおまえだ」的な。こわい。
んで、宗像家が代々閉じ師をしているのもわかるような。要石を自分たちの家の者から選出したり、扉をメンテナンスし続けたり「そういう家系」ってことですよね。さらにこわい。


最後に少し、批判を書きます。
ラストの幽世で、すずめさんが小さい自分へ向けた言葉に首をかしげています。あのラストに感動した方はお戻りください。




幽世ですずめさんが言ったのは、うろ覚えですが「明日も明後日も自分は生きていって大事な人もできる。だから大丈夫」みたいな台詞だったと思います。
たしかにそうなんでしょうけど、大事な人(もの)を失くした人にとって「いつか大丈夫になる」ことはぜんぜん大丈夫じゃないのでは、と思いました。
生きていればつらいことばかりではないし、悲しみもいつか和らぐのはきっとその通り。ただそうやっていつの間にか「大丈夫」になってきている自分に、薄情だと苦しくなることもあるのでは。そんな想像をしました。
作中のすずめちゃんの言葉は、あくまでも自分に向けたもの。だから他人がとやかく言うべきではありません。しかしあの言葉はすずめの個人的なものに見えて、観客に向けたメッセージでもあるはず。というより「観客へのメッセージ」要素の方が強そう。
だからすずめの台詞を聞いたときは、まずギョッとしました。

もちろん共感した、勇気づけられたという人もいるはず。むしろそう感じる人の方が多いでしょう。
ただ中には、自分のように違和感を覚えた人もいるかもしれません。「これ聞いたらあの人は落ち込まないかな」と思い浮かんだ人が3人ほど。どう思うかはその人の自由とはいえ、ついそんな心配をしてしまいました。

もしも100%すずめがすずめに向けて言うとしたら、もう少し違うニュアンスになる気がします。