ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【Mr.ホームズ 名探偵最後の事件】晩年ホームズのあと始末

名探偵シャーロック・ホームズ(93)が、田舎に隠居するきっかけとなった30年前の<最後の事件>を思い出そうとする話。


2022年11月9日現在ではすでに終わってしまいましたが、Prime対象作品でした。映画館でやっていたときから今作が気になっていたため、終わる前に滑り込みで視聴。観ることができてよかったです。

シャーロック・ホームズものとはいえ血なまぐさい事件はありません。サスペンスというよりヒューマンドラマ寄り。自慢の頭脳も衰えて身近な人たちに先立たれた老年のホームズが、旅立ちに向けて心の整理をつける話、でしょうか。
内容もごくシンプルで奇を衒ったものではなく、ホームズが引退するきっかけとなった<最後の事件>で何があったのか、現在の話と平行して少しずつ明かされていきます。
ただ合間に挿入される「ホームズ、山椒もとめて日本へ行く」の巻が現在および<最後の事件>とどうつながっているかがわからず、まさにスパイスのように効いていました。
そして終盤はジーンとする。ひたすら胸を打たれる、しっとりとした趣きのあるお話でした。ケルモット夫人との会話、ホームズがしたためた手紙、家政婦さんとの会話など。ラストに石を置いていくシーンではガチ泣きしてしまった。続くロジャー少年の台詞もよく、なんてええ子なんや……と涙を誘います。

年を取ると脳機能を含め身体があちこち衰えていきます。親しい人たちを見送ることになるし、自分だっていつお迎えがくるかわかりません。失うことばかり。かく言う自分はまだ若手の部類とはいえ、10代20代のときと比べるとだいぶガタがきているな~としみじみ感じます。
加齢と同じく起こった出来事は変えられない。ただそれを自分の中でどう落とし込むか、次につなげるか。死を前にしての心の整理と周りの人とのつながり、そして次世代へ託すことが、さりげない演出で描かれていると感じました。
年老いた主人公が過去・未来とどのように折り合いをつけるかが描かれた作品は他にもあれど、誰もが知っている「シャーロック・ホームズ」を題材にしたところがおもしろいと思います。

華々しい推理劇や手に汗握るような冒険はありませんが、ただひたすらしみじみとした良さがありました。
あとストーリーだけでなく、スーツにハットという完全武装イアン・マッケラン氏がひたすら上品でかっこいいです。ああいう年の取り方がしたいものよ。