ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【AI崩壊】崩壊したのは誰か

人々の生活に深く浸透した医療AI「のぞみ」が突如暴走。暴走させたテロリストと見なされた主人公は、AIを止めるために逃走しながら奔走するお話。

タイトルを目にするたびに「JR東●」が頭をよぎります。まちがえて「J●崩壊」と言わないように気を付けよう(すでに何度かやらかし済み)。

ジャンルは近未来サスペンス、でしょうか。この手の日本映画はチープ、と決め込んでいましたが舐めててすみませんと平身低頭するほど手が込んでいました。感動演出が薄味めなのも個人的によかったです。パートナー愛・家族愛を前面に押し出されるのは苦手なので……。
そういう意味では、序盤の病室でのシーンが意外でした。旅立つ病人を見送るシーンって、お互いに手を握って涙ながらに声を掛け続ける、という描き方が多い気がします。しかしながら(妻がタブレットを持っていたからかもしれませんけど)手を握りしめることもなく、淡々としていたのが印象的。
あのシーンの解像度だけやたら高い気がします。役者さんの意向か、あるいは制作者サイドの誰かの体験談が元になっているのか。そんな想像をしました。

作中のメインテーマであろう「命の選別」について。病歴、納税額、交友関係、社会的地位といった値から、その人に「生きる価値があるか否か」を区別するというもの。フィクションのみならず、現実でもたびたび取り上げられることがありますね。
こうした議論には思うところが2つあって、1つは「賛成派の多くが『自分は生きる価値がある側』と思っていそう」なこと。この点が実に腹立たしい。
「自分は『価値なし』と判断されるだろう、でも人類存続のためにやむをえない」と考えているならいいんです。ダメなのは、最初は賛成していたけど「価値なし」と判定されるや否や意見を翻す場合。そういう一貫性のない輩はボッコボコにしてやるぜぇ。

そして2つ目は、そもそも人類の存続に意味はあるのか、ということ。
生きてると楽しいことはあるし、なんとなく生きてる方がいいような気がするし、大事な人たちは特に長生きしてほしいと思います。ただ言うて誰しもいつか死ぬし、星の単位でみれば個人の人生も種の生存も一瞬の夢みたいなもの。なので選別しようがしまいがどっちでもいいかなと私は考えてます。
ただやっぱり、共食いみたいなことまでして生き残る価値があるかなという疑問は残りますが。命は大事だしなんとなく生きている方がいい、という主張はわかるものの、もっと強い根拠がほしいところ。いちおう生物なので自己保存の欲求は感じますが、それ以上の根拠となると感じませんし思いつきません。

しかも作中で挙げられている「少子高齢化」なんてとっくの昔に問題視されていたんだから、もっと早く打開策考えておけよとしか。テクノロジィの力を使ってやることが「間引き」って野蛮すぎやしませんか。

言いたい放題、否、書きたい放題しました。
日本映画の近未来ものなんて……という固定観念があったため、ずっと気になりつつ『プラチナデータ』も手が出せずにいました。ただ今回でいい感じに覆されたので、観てみたいと思います。