ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

Netflix【今、私たちの学校は…】濃厚な人間ドラマ

高校を舞台にしたサバイバルドラマ。
急速にゾンビ・ウイルスが広がっていく中、校内に取り残された生徒たちが協力したり衝突したりしながら脱出を目指すお話。全12話です。

何気なく1話を観たらやめどきを見失いました。感想が長いので折りたたみます。イ先生と司令官について綴っています。

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お話はオーソドックスなゾンビものという印象。ウイルス誕生のいきさつと対策、知略を巡らせた戦い、そして人間模様が描かれています。
ただ舞台が学校かつ登場人物のほとんどが学生。なので銃撃戦ではなく、学校ならではのギミックを生かしてピンチを切り抜けていくのが新鮮でした。
緊迫感を伴うシーンが多い中、合間あいまに入る生徒たちの掛け合いが清涼剤。たぶん視聴側が疲れ切ってしまわないよう、緩急のつけ方はかなり計算されているのでは。そんな印象を受けました。

メインは校内の生徒たちですが校外の戦いも描かれます。外では、教師、刑事、政治家、レスキュー隊員、司令官など大人がほとんど。それぞれの行動が別の人に影響することもあり、どことなく『SIREN』味を感じました。
たくさんの登場人物がいていろんなドラマが語られるので、観る人によって注目する場所や共感ポイントがかなり異なる気がします。観た人みんなで「誰についてどう思ったか」を一人ずつ話したらいろんな感想が出てきておもしろそう。

自分が特に印象的だったのは、イ先生と司令官です。
イ先生は出番こそ少ないものの、キーパーソンなのでさまざまな言葉を残してくれています。中でも強烈だったのが「希望は、人生を諦めたくないと思わせる最も残酷な拷問だ」というセリフ。
そんな希望の説明の仕方ある……? と思わせると同時に、イ先生を象徴しているなぁと。きっといろんな感情が渦巻いているだろうに、語られる言葉は理知的かつ詩的。「頭のいい人は感情の吐き出し方ヘタ」という先入観を代表したような人だと思います。「千の顔を持つウイルス」なんておっそろしいもの作らずに、もっと泣きわめいて怒鳴り散らして周りの人たちを巻き込めばよかったのに。

やや話は逸れますが、いじめについて。イ先生とその家族、そして他の人たちの人生を狂わせたのもきっかけはいじめでした。
いじめっ子って、どうして徒党を組むんだろう。少なくとも私は群れてないいじめっ子を見たことがありません。一人じゃ何もできないのか。
本来彼らは人一倍、臆病な性格な気がします。さらに想像するに「自分は生粋のはみ出し者だからいつかハブられる」と本能的に感じているのでは。だからハブられる前にターゲットを見つけて、仲間とともに先制攻撃を仕掛けているのかな、なんて推測しています。攻撃的な言動を示していますけど、そうしていないとその場に立っていられないくらい芯の方ではびくびく・おどおどしているように見ていて感じる。
学校の内外問わず、いじめっ子同士が絶対に接触できないように引き離したらどうなるのか気になります。あと「絶対に人をいじめない」人たちの中に放り込んだらいじめっ子のメンタリティはどうなるのかも。
加えていじめている(暴言・暴力をふるっている)ときの自分の顔を、鏡や写真で見せたらどんな反応をするんだろう。
ドラマの話に戻ると、グィナムにも鏡を見てほしいな~とずっと願ってました。並みの神経の持ち主なら、変わり果てた姿に愕然とするのでは。

そして司令官について。
彼がウイルス封じ込めのためにとった作戦は「決断がほぼノータイムだった」ことに一番慄きました。
ふつう、思い付きはしてもなかなか決められません。もっと悩むはず。だからきっと彼は今まで何度もシミュレーションして気持ちの整理もとっくにつけていて「しかるべきときは必ず」と覚悟を決めていたのではないか。
想像しただけでつらい……同じ人間なのに、軍人ってだけでそんな覚悟決めさせちゃってすみません……って気持ちになる。
彼を責めたくなる気持ちもわかりますけど、でも責めちゃいかんだろ……考えられる最良手を、自らの感情をすり潰しながら取ってくれたんだから。

またまた話はずれますが、情報について。状況や立場によっても異なるでしょうけれど、自分の知っていることや思ったことは、悪口でないかぎり「なるべくオープンにする」ことが相手への誠意の見せ方であり礼儀だと考えています。
だから司令官が最後に奥さんにとった行動はひどい。伝えたくない気持ちはわかりますけど、自分が奥さんの立場だったら末代まで祟ってやると思うし、なんだったら地の果てまで追いかけます。
あと他の人たちも、知っていることをもっと積極的に伝えていたら、あの人死ななかったんじゃないかな……とか子供と大人の分断は起こらなかったんじゃないかな……と思えてなりません。
今さら言ってもあとの祭りですが。だから知ってること・思ったことはなるべく早く伝えておこうや。自分亡きあとのバックアップのためにも。

作中には「いつか話そう」とか「明日またやろう」と未来に希望を託すシーンがいくつかありました。
未来を夢見ることは生きていくために必要だと思います。ただ体験できるのは今しかなく、人が必ず迎える「死」は過去と今以外のときに訪れます。
厳密にいえば未来はなく、あるのは今のみ。だから言いたいことは今言っていた方がいいし、やりたいこともなるべく先送りにしない方がいい。難しいですが。
とはいえつらい状況に置かれている人にとっては「今しかない」ことがさらにしんどいんですよね。明日は、一週間後は、来年はきっといいことがあると未来の自分にエールをおくらないとやっていられない場合だってあるでしょう。
すでにシーズン2の制作が決定している本作。次はどんな人たちが登場するのか、どんな関係が描かれるのか。今から楽しみです。