ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【戦闘妖精・雪風 アグレッサーズ】浮き彫りになる人間性と特殊性

13年ぶりの新刊……!!!
5月下旬に『シン・ウルトラマン』を観に行ったとき、頭の中の3割ほどが『戦闘妖精雪風』のことを考えていました。それで何気なく『雪風』を検索してみたら新刊が出ていて「!?!!!??」状態に。
ぜんぜん知らなんだ。即購入です。ただ前作までの内容すっかり抜けていたので、1~3巻をまず再読。
当たり前ですが3巻から話が思いっきり続いていたので、おさらいしておいてよかったです。大筋は覚えていたものの細かいところは抜けてましたし、何よりすっごくおもしろかった。記憶にあったよりもおもしろくて得した気分。しかも1巻→2巻→3巻とぐんぐんグレードアップしていくのがすごい。

興味深いなーと思うのは、異性体「ジャム」の特徴と主人公が所属する部隊「特殊戦」の在り方です。
まず「ジャムの形がわからない」ことがすごく興味深い。地球外生命体って、だいたい人型が多い気がします。だから人間の認知や概念で推し量ることが難しいジャムは、けっこう画期的なんじゃないかと。ひょっとしたらSF界ではよくあることかもしれませんが。
自分はあまりSFものを嗜まないので、ジャムの生態(?)がすごく新鮮です。いまだ謎多きジャムに好奇心がそそられてなりません。ここまで「人間から見た異性体の不気味さ」を描いた作品はそうないのでは、と思いました。『惑星ソラリス』ともまた異なる不気味さ。
またジャムと対峙する中で「人間とは何か」、「機械知性たちの認識の仕方とは」が浮き彫りになってきます。機械知性たちについては次巻あたりでさらに深掘りされそうでオラわくわくすっぞ。

そして主人公が所属する部隊「特殊戦」の在り方。作中でもさんざん言われてましたが、名前のとおり特殊だなーと感じました。軍隊におそらく必須であろう、縦と横の関係が希薄な点が。
戦いに身を置く兵士はかなり高いストレスにさらされていると思います。ときには同じ人間と戦わなければならないし、自分がヘマしたら味方全体が危険にさらされるかもしれませんし。
そういっためちゃキツイ環境でいかにメンタルを支えるか考えたとき、必要とされるのはおそらく縦と横のつながり。上官など権力者への服従(縦)と、同じチームメンバーとの仲間意識(横)。
でも特殊戦、たぶんどっちもないんよ……。少なくとも主人公は持ち合わせてない。「仲間ァ? 知るかYO」みたいな態度なのになぜか生き残れるし集団として機能するしで、興味深くて仕方ありません。しかもジャムに対して有効である、という点も。

2・3巻が覚えていた以上のおもしろさだったので、4巻は正直、この2冊を越えることはないだろうなんて勝手に思ってました。が、とんでもなかった。2・3巻とは趣を変えつつ、ますます盛り上がりを見せてます。
あとこんなわかりにくい内容をよくぞここまで読者がわかるように書けるよな、とも。作者さんバケモンかと慄く。
たぶん4巻までは舞台を整えるための準備段階、ウォーミングアップな気がします。次の5巻が待ち遠しくてなりません。次は雪風の思考トレースかなー、地球との政治関連かなー、あるいは「ジャムの目的か」がついにわかっちゃうのか、と想像するだけでわくわく。
とはいえいつ発売するのか。
ヒストリエ』と『ドリフターズ』、あと『雪風』は「生きているうちになんとか完結させてくださいお願いします」本です。ちゃんと最後まで読むことができるかハラハラする。