ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【拷問男】混ぜるな危険

観たあとは灰燼に帰しました。痛めつける系は苦手なのになぜ観たのか。
「愛娘を殺された父親の復讐劇」ということで、娘を思うゆえの悲しみと犯人への憎しみ、その間で揺れ動く父親の葛藤を期待して観始めました。少し意外な展開もありつつ、折り返しまでは普通に視聴。
後半の拷問シーンがきっとこの映画の目玉(?)なのでしょうけれど、半分も正視できなかった……。痛そうな演技>使われる器具>効果声>>>>傷跡、で耐えられず。このアングル攻めてるな、役者さんの演技すごいな、と半ば逃避しながら観てました。

内容としては、
 娘がかわいい→わかる
 失って悲しい→わかる
 犯人許すまじ→わかる
 誰が犯人かわかったから拷問→???
でした。

考えの筋道的には「大好きな娘を奪った犯人はいくら憎んでも憎み足りないので娘の分まで苦しませてやる」なのでしょう。ただ「娘を奪った憎き犯人」→「を拷問」の間にものすごい飛躍がある気がする。「おまえも苦しめ」と呪うことと実際に手を下すのってすさまじい隔たりが……あってほしいなぁ!
いくら憎いからって実行する? しかも拷問ですよ? 切ったり叩いたりぶっ刺したりを、殺されかかってるわけでもないのに同じ人間相手にできるでしょうか。平常下でそれはちょっと難しいのでは……と思いますがいかがお過ごしですか……? と弱気になるくらい主人公の勢いを感じました。「これがスタンダードだァ!」と言わんばかりの。思わず自分が異常なのかと疑ってしまいます。
子供を奪われたことがないから理解できぬのだと言われれば、たしかにその通り。

いったいなにが主人公を駆り立てたのかというと、娘への深い愛情+犯人への愛情な気がします。犯人のことも好いていたからこそただ恨むだけでは足りなくて、裏返された愛情が主人公の凶行につながったのではないかと想像。もともと抱いていた好意とそれが失われたことへの悲しみが、薪となって狂気の炎を燃え上がらせたのでは。
あと「犯人にここまでさせてしまったのだから、自分も同じだけの罪を背負わなきゃ」とか「自分が拷問すればするほど犯人の罪が許される」とか……? 無意識下ではそれくらいのことは考えていてもおかしくない気はします。

あと本筋とは関係ありませんが、娘さんが怖かった。目の前でパパママがあれだけいがみ合ってるのにひたすら無邪気ってどういうこと……。6歳なら周りの大人(特に親)の機微はもう少し察せられると思います。
パパの前でママの、ママの前でパパの話はしちゃ駄目だくらいは絶対わかる。まるで両親の表情など見えてないかのようにはしゃいでいたり、話題を振ったりしているのがホラーでした。

怖いところは数々あったものの、中盤までは胸に迫る作品です。
仲睦まじげな夫婦と娘の誕生、成長と親子の触れ合い。両親の離婚というハプニングはあったものの、ごく普通の一般家庭。「この平和が失われる」ことが観ている側にはわかるからこそ、胸が締め付けられました。