ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【ウォッチメン】オウルの悲哀

suminotosyo.hatenablog.com


この記事にも書いた、オウルのことを腰抜けと思っていたけど彼も彼で大変だろうな……と考えを改めたことについて。実写映画版「ウォッチメン」の話です。
まず、どうしてオウルを「腰抜け」と思ったかというと。
 ・ラストで「俺がなんとかする」みたいなこと言いつつけっきょく見てただけ
 ・傍観してたのに怒る
 ・怒りの矛先をDr.マンハッタンではなくオジマンディアスに向ける
以上の3点です。

何とかすると言いつつ、けっきょくロールシャッハにはかける言葉もなく見ていただけ。しかもDrではなくオジマンに怒りの矛先を向けたのは、Drだと返り討ちにされると思ったからでは。だからまだ人間味があって、受け止めてくれそうなオジマンに怒ったように見えてしまいます。もしあの場に自分がいたら「おまえに怒る資格はねぇー!!」と頭をすこーんと叩きたい。
オウルが「自分はどう思うか、どうしたいか」と立場をもっと明らかにした上だったら、自分もここまで文句は言わなかったと思います。でもなんだかロールシャッハ、オジマン、Dr.マンハッタンの3人と比べると、彼は自分の考えを持っていない気がする。すべて流されるまま、ことなかれ主義に見えてしまいます。だから余計にじれったいというか、見ていてイライラしてまう……(炎)

ここまでさんざん貶しましたが、とはいえオウルの在り方もけっこうしんどいのではないかなと。ロールシャッハやオジマンディアスほども振り切れず、Dr.マンハッタンほどの力もない。ヒーロー殺しを懸念していても、コメディアンやロールシャッハほど警戒されないってある意味すごい能力では。さほどの行動力も影響力もない、無害な人物とみなされたってことでしょ……?
すべてを知った上でもこれまでと同じように暮らしていける適応力の高さをおそらくオウルは持っていて、そうした彼の「普通さ」にロールシャッハは救われていたのではないかと想像。たぶんロールシャッハだけではなく、Dr.マンハッタンやオジマンディアス、ローリーも同じでしょう。だから最後、他の誰でもないオウルが怒ったのだし、彼だけが怒ることを許されたのだと解釈しています。

普通さがあったとして、それは他のヒーローたちと比べての話で、一般人と比べたらやはりオウルは外れ値。もちろんロールシャッハよりは一般人枠寄りでしょうが……かぎりなく「普通」に近いけれど、一般人にはなりきれない。突き抜けることも「普通」に徹することもできないオウルは、誰よりしんどい気がします。「どっちつかず」を永遠にいくしかないということなので。

またドラマ版でのオウルが哀愁を誘います。どういった経緯かはわかりませんが、たった一言で片づけなくてもいいじゃない……さすがに不憫で、遠い目になりました。