ほねぐみ

本、映画、ゲームの感想など徒然

【劇場版・呪術廻戦0】夏油傑は人類愛の夢を見るか?

jujutsukaisen-movie.jp

原作は0~16巻まで読んでいて、アニメは未視聴、小説・ファンブックは未読です。

 

結論から言います。
観に行ってよかった!!

アニメーションってすごい。色と動きと声とが、作品に命を吹き込む。本当、「アニマ(魂)」と再確認しました。
作品自体は2時間ないものの、情報量が過密で、まるで長作を観たような感じがしました。

以下、呪霊と夏油さんについて語ります。

 

●呪霊のデザイン

アニメ未視聴なのになぜ映画を観たかというと、呪霊操術・極ノ番「うずまき」が観たかったからです。
「うずまき」は禍々しさ爆・発!みたいな感じを想像していましたが、元ネタがあるからかちょっと抑え目な感じでした。

目を奪われたのは、どちらかというと特級仮想怨霊「化身玉藻前」の方。
なんかもう、特級だったし仮想だったし怨霊だった。玉藻前を観るためにもう一度劇場に行きたい。それくらいのオーラと説得力を感じました。

「うずまき」は、玉藻前を見てしまった後だと、禍々しさが若干物足りない気がします。(※個人の感想です)
夏油さんの切り札、最終兵器ともいえるのに、玉藻前がね……ほんとすごくて「うずまき」がやや霞んで見えてしましました。

 

あと呪霊ではありませんが、冥さんの戦闘シーンがすばらしかった。「これぞ冥さん!!」という感じがしたし、なにより格好良かったです。
憂憂がいたら惚れ直してた。憂憂でなくとも惚れる。

 

最後に「特級過呪怨霊 祈本里香」について。
もうこの名前だけでご飯5杯は食べられます。芥見先生のネーミングセンスがごっつ好き。
ただ、漫画を読んだ時は正直、造形に違和感がありました。
なんでこの見た目なのかな~、う~ん、としっくりきてませんでしたが、映画を観て納得。
幼い子供が怨霊化していて、さらに乙骨君と一緒に戦うことを考えると、この見た目になるなと。動きと声に、ものすごい説得力を感じました。
あと漫画版と比べると、見た目にやや女性的な気がします。シュッとした感じとか。白だから余計そう感じるのかもしれません。

 

●夏油傑について

ずっと夏油さん目線で映画を観ていました。最推しです。
これまで、五条先生や虎杖君との対比で彼を考えたことはあるものの、映画を観て初めて乙骨君との対比を考えました。作中の「自己肯定か。生きていく上でこれ以上大事なこともないだろう」とのセリフを聞いて、きっと彼自身覚えがあるのだろうなと。

 

ちょっと話は飛びますが、いろいろ考えていると行きつくのが
 「何のために戦うか」
 「愛は呪いになるのか」
という問題です。

呪術高専は、力の使い方や戦い方といった技術的なことだけでなく、「なぜ呪霊と戦うか」といった、本人の価値観と結び付けて生徒たちを育む必要があると思います。むしろ五条先生はそういった教育がしたいのかもしれません。
夏油さんはそれがうまくいかなかった。なんとなく「良いこと」と思って人々を呪いから護るために戦っていて、ただその行動に信念と呼べるものが伴っていなかったから、「護る価値ある?」と揺らいだのでは。
もっと初期のころから「サイテーな人間もいるけど、それでも自分は呪いと戦う」と思えていれば、せめて「なぜ人間を護るか?」を考えるきっかけがあれば、彼は違った道をたどっていた気がします。

その点は乙骨君も同じで、彼は高専に来て「みんなと一緒にいたい」と思ったから夏油さんと戦ったけれど、これがもし「里香ちゃんと一緒に生きていきたい」だったら、夏油側につく可能性もあったかも。そう考えると夏油さん残念だったね!と思う。

 

そして「愛は呪い」について。
なんとなく、夏油さんは非呪術師が好きだったから、可愛さあまって憎さ百倍みたいな感じで憎む気持ちも強くなったのだと解釈していました。
ただこれはたぶん違くて「非呪術師が好き」ではなく「呪術師が好き」「大事」だから「その愛が呪い」になったのだと今は思います。

 

相手に対してポジティブな気持ちだけではなくて、執着や恨みといったネガティブな気持ちにもなることを「愛」と呼ぶの、なんとなくしっくりきていません。
それは愛なのか。ぜんぶひっくるめて便宜的に「愛」と呼んでいるだけで、本当は個々にもっと違う名前をつけることができて、そして「愛」はもっと別のなにかなのではないか、とぼんやりとですが考えています。

だって変な意味ではなく、夏油さんと五条先生の間にはたぶん愛がある。しかしこの二人はお互いに呪い呪われることがなさそう……と書きながら不安になってきました。あの行動とか、言葉とか、呪いでは? と思うことが走馬灯のように出てきました。

ちょっと話は変わりますが、五条先生は「呪い」を生むほど強い感情を持っていなさそう。
そこが、彼が「最強」たるゆえんだと思っていて、このことはまたどこか別で書きます。

 

「夏油さんについて」と言いながら、彼のことをあまり評していないので、最後にどこが好きかを語ります。ちょっと気持ち悪いと思います。

夏油さんは、本当に非呪術師をどうにかしたいんだったら、いい子なフリして高専にとどまりながら仲間を着実に増やしたりとか、それで内部崩壊やクーデターを狙ったりとか、さらにさらに五条先生を味方に引き込もうとしてみたりとか、もっとやり方があったと思う。
彼の戦いは、行動原理が「非呪術師 殺!」に振り切れず、五条先生を仲間になかった(したくなかった?)時点でたぶん詰んでいます。
勝ち目がないと、きっと自分でもわかっていながら行動せざるを得ないところ、そして目的のため何をしてもいいと思わないところが、最高に推せます。なりふりかまうところがいい。

そう考えると、渋谷事変って彼的にどうなんだろう……。呪術師vs呪霊のにらみ合いに、もし夏油一派が参戦したら三つ巴になるのでしょうか。
「馴れ合う気はないよ」とか言いながら、呪術師組がピンチのときにタイミングよくやってきては協力して去っていき、しまいには五条先生と阿吽の呼吸で強敵をなぎ倒すところまで想像しました。
妄想です。